Nothing Special 2

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昨日の続き

ー 下町の家庭訪問 ー

夏江の家はアパートの2階だった。狭い部屋で夏江が母親を前に「先生、聞いてよ。友達の家の赤ん坊がかわいいから、お母さんに赤ちゃん産んでよって頼んだら、もうイヤだって。そんなに欲しいなら、アンタとお父さんで作れば、だって。親としてひどいと思わない」と涼しい顔で訴える。戸惑う私を前に母親はにこにこ笑っているだけだ。
そればかりか「先生の給料はいくら」と母親が遠慮なく聞く。「新卒だから5万円位かな」と私は答えた。「よくそんな安い給料で働く気がするね。私、保険の外交だからそんなハシタガネじゃ働かないよ」と気の毒がってくれる。とうとう最後まで、夏江の話はほとんどできなかった。